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熊倉涼子個展「Gemne(ジェムネ)」

2026年6月27日(土)〜 7月25日(土)
休廊日:日、月、祝

展覧会タイトル「Gemne」は、「gene(遺伝子)」と「meme(文化的情報や価値観の伝播)」を組み合わせた作家による造語です。本展では、生物的な継承と文化的な継承が交差する地点から、現在の世界がどのように形づくられてきたのかを見つめます。

人間は長い時間をかけて世界を観察し、分類し、意味づけながら、その見え方そのものを更新してきました。そこでは単に自然の姿が問題となってきたのではなく、何を美しいとし、何を重要とし、何を残すべきと考えるのかという価値判断が常に介在しています。

絵画史において動植物は、繰り返し描かれてきたモチーフのひとつです。しかしそれらは単なる自然の再現ではなく、各時代において何が価値あるものと見なされていたのかを可視化する装置でもありました。中世の宗教画では信仰体系の中で意味づけられた存在として、ルネサンス以降の博物学的関心のもとでは知識と観察の対象として、17世紀オランダの静物画では交易や富、蒐集といった社会的価値の凝縮として描かれてきました。そこに表されているのは自然そのものではなく、自然に付与された価値のかたちです。

一方で、人間の選択や意図は必ずしもそのまま受け継がれるわけではありません。品種改良によって生み出された動植物は思いがけない形で広まり、ときに人間の想定を超えた存在となります。文化的な価値もまた、時代や環境の変化によって意味を変え、失われ、あるいは新たな価値を与えられながら生き続けます。絵画や遺跡もまた、保存や劣化、修復や切断、再解釈といった幾重もの作用を受けながら現在へと受け継がれてきました。

熊倉が描く品種改良された動植物は、生物学的な変異の結果としてだけでなく、人間が何を望ましいとし、何を選び取り続けてきたのかという価値判断の痕跡として現れます。しかしそれらは同時に、人間の意図から離れ、自律的に変化し続ける存在でもあります。そこには選択と逸脱、継承と変異とが複雑に折り重なっています。

私たちの目の前にある世界は、人間による無数の選択の結果であると同時に、その選択から生じた逸脱や変容の蓄積によって成り立っています。本展は、継承と変異が複雑に絡み合いながら形づくってきた世界の姿を見つめるものです。

この機会にぜひご高覧ください。

 

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