2022年11月26日(土)〜12月24日(土)
開廊時間:12.00-18.00
オープニングレセプションはありません。
初日はアーティストが在廊します。
日、月、祝、休
「パンデミックで、誰にも会わなくなって、家でテレビやスマートフォンでニュースを見ることが多くなった。パンデミックが沈静化した最近でも、その癖がぬけず、ニュースを追ってしまう。まるでニュースジャンキーだ。事件や戦争、経済、芸能ニュースまで、時間の無駄で馬鹿らしいと思うような記事まで読んで、後で後悔することもある。ふと思うと、なにも頭に残っておらず、ただそのニュースを知ることですぐ忘れてしまう。深くそれらの物事を考えるより先に新しいニュースを手に入れようとする。しかし、頭はつねに疲れているような気がする。
そして、遠く離れて暮らす両親とは、スマートフォン越しにコミニケーションをすることが、リアルな生活の一部になってしまった。そんな時、僕の身体がどこにあって、僕の精神はどこにあるのだろう。いつも心と身体が一緒ににしておきたい。
パンデミック中、エッセンシャルワーカーという言葉をよく聞くようになった。
レストランでテイクアウトした紙袋には、オーダーを書いた写しのメモがホチキスで止めらていた。自分たちがオーダーした料理の名前が走り書きされている。僕は、そのメモから目が離せなくなる。
それは、無意識でいて、無垢で美しい存在になっているような気がした。僕は、その日々の繰り返しメモを取ることで習得された簡略化した美しい字体を、集め、それをお手本にし、息を止め、筆先に集中し、なぞり、その積み重ねられた時間の中に、知らない他人と細やかなコミニケーションを図る。なぞることによって、自分の知らない時間や関わった時間をぐっと引き寄せる。そして、自分が食べた食事とそれを共に食した友人たちを思いながら。。。
生きることと働くことはつねに共にあるんだ。
この密やかな行為が、不思議にも、この世界がぐるぐる回り始めるきっかけになった。」
池崎拓也
池崎拓也(b.1981)は、徳之島出身で幼少期を島で過ごし、鹿児島市内で育ったのち、武蔵野美術大学に進学し、中国に留学しました。その後東京にスタジオを構えましたが、2018年に渡米し現在ニューヨークを拠点に活動しています。コロナ禍で彼を取り巻く環境と風景は大きく変化し、その度に自らの居場所を探し制作をしてきました。現在国立新美術館での「DOMANI・明日展 2022–23」にも参加し、新近作を発表しております。併せてご高覧いただけましたら幸いです。
皆様のお越しをお待ち申し上げております。