2021年6月1日(火)〜 7月3日(土)
開廊時間:12.00-18.00
日、月、祝、休
オープニングレセプションはありませんが、6月5日(土)にアーティストが在廊いたします。
会期、時間につきましては変更の可能性がございます。あらかじめご了承ください。
「種まく人」というタイトルを聞いたとき、ミレーのそれを思い浮かべるでしょうか、ゴッホの数ある同タイトル作品のうちのひとつでしょうか。それとも別の画家の作品でしょうか。その絵を実際に見たことがなくても、タイトル「種まく人」は広く知られています。
多くの画家が題材としてきた「種まく人」、これを展覧会タイトルにした理由を、「誰もがよく知っている絵画のタイトルを引用したかっただけ」で、例えばそれは「ひまわり」でも、「叫び」でも良かったのだけど、オランダに長く暮らし、野菜や果物を多く描いてきた自分にとって、「種まく人」は無関係ではないと思った、と、長谷川は言います。
「自分の絵で何か伝えたいことがあるわけではなく、描きたい美しい風景や、ディーヴァがいたわけではないけれど、ただ絵が描きたかった。絵を描くために、記憶の中にある自分が心を揺り動かされた古今東西の名画に登場するモチーフを抽出し、分解し、再構築して自分なりの描き方に落とし込む、という実験を今までずっとしてきた。例えば野菜を描けばアルチンボルドや若冲と、カーテンを描けばオランダの室内画と、椅子を描けばゴッホの絵と接続することができるが、自分が描くそれらは、魚は魚ではなく、りんごはりんごではない。まるで禅問答のようだけど、全ては「ただ絵を描く」ためにそこに描かれているだけなんです。」
新型コロナウィルスが猛威をふるい、世界中が沈黙し絶望の空気に包まれていたとき、画家たちはそれぞれがまるで「種をまく」かのように、いつかその絵が人目に触れる日を想像し筆を動かしていたと思うのです。その筆の動きを想像し、音に耳を澄まし、目の前の絵画に対峙する喜びは、まるでバルビゾン派が農民の生活を描くことで伝えた「生きる喜び」のようですが、今の時世では「当たり前の奇跡」です。その当たり前の奇跡を、より多くの方が体験できますよう、ギャラリーを開けられる喜びを、忘れないでいたいと思います。
長谷川繁インタビュー映像2021(13分20秒)*画像をクリックするとYouTubeに飛びます:
Satoko Oe Contemporary