S.O.C

長谷川繁「PAINTING」

会期:2019年3月23日(土)〜 4月27日(土)
オープニングレセプション:3月23日(土)18.00-20.00
開廊時間:12.00-19.00
日・月・祝日休廊

徳岡神泉(1896-1972)は、「椿」(1922)という作品を残しています(東京国立近代美術館蔵)。102.1×86.8cmというさほど大きくない画面いっぱい、はみ出るほどに描かれた椿の木は、どこか不気味な、現実から切り離された様相で、花はただそこに咲き乱れ、生い茂る葉の一部は散り枯れています。

本展に出品予定の長谷川の新作の一つに、きゅうりで縁取られたティーポットのようなも
のが描かれている作品があります。ティーポットは、ティーポットのようであってティー
ポットではなく(そもそもきゅうりも)、その上に潔い黄色で描かれている柑橘類の果実
のようなものは、柑橘類の果実ではないかもしれません。画面を縁どるように塗られた
グレーの色面は、布のドレープのようでもあり、丘陵線のようでもあります。

長谷川が、「PAINTING」を展覧会タイトルにしたことからもわかるように、ここに展示
されている作品はただ「絵画(PAINTING)」であること以外何ものでもなく、それ以上
の何かを、と求めることは、邪推も甚だしいのかもしれません。

それでも長谷川の絵画に対し、爽快感と、砂利を噛んだような不快感を覚え、腑に落ちな
いもやもやしたもどかしさがつきまとい、自分が今何を見ているのか、作家はなぜ、これ、
を描いたのか、少しでも手蔓を探そうとします。タイトルのない作品からは期待する情報
が得られず、また絵の前に立ち返り、振り出しに戻ってしまい、堂々巡りのようです。
それはまるで、私たちが長谷川の絵画へ向き合う態度を試されているかのようで、緊張感
を覚えずにはいられません。長谷川の絵画から得ようとした何かは、自らの中からしか
引き出すことができず、ただ自らの知識量と感受性を認識させられる機会となります。

長谷川繁は何を描いているのか。
長谷川繁はなぜ描くのか。

ヨーロッパを拠点に長く活動していた長谷川は、「PAINTING」をどう捉え、何を自身の
「PAINTING」と呼ぶのか徹底的に思考し、作品をただ自身の「絵画(PAINTING)」
たらしめんとすることへの執着は狂気じみています。

本展では、旧作を含め長谷川繁の新作、近作を6点展示致します。長い沈黙を破り9年ぶりの
個展となります。皆様のご来廊を心よりお待ち申し上げております。

長谷川繁は1963年生まれ。主な展覧会に、2010年「絵画の庭」国立国際美術館(大阪)、
2010年「公開制作49」府中市美術館(東京)、2009年「放課後のはらっぱ」愛知県美術館
(愛知)2005年インドトリエンナーレ(デリー)など。

 

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