S.O.C

paper works : 池崎拓也、升谷真木子

会期:2019年5月18日(土)〜 6月22日(土)
開廊時間:12.00-19.00
日・月・祝日休廊

池崎拓也と升谷真木子の新作のペーパーワークを紹介する展覧会を開催致します。

池崎は、昨年よりニューヨークに拠点を移し、彼にとって新しい文化の「吸収」と、そこに自らのバックグラウンドを投影させながら制作をする「発散」を、呼吸のように繰り返しています。今回発表する新作シリーズ「The Address on The Address」は、新天地であるニューヨークの住所に届いた郵便物に、ニューヨークでは見ることのない南国の植物「蘇鉄」の葉や、故郷徳之島を思わせる波や海のドローイングを施したシリーズ作品です。波の一部は手作りのスタンプを押したものであったり、豊かな色彩を用いたものであったり、と表情はそれぞれに異なります。通常中身を確認して捨てられるはずの封筒や、インターネット注文で届いた洋服や日用品の過剰梱包箱など、池崎がニューヨークに移り住み、その大都市のゴミの多さに驚いた、という率直な感情を発端に、日常的に無意識的に出しているゴミを、自らの住所が刻印されている唯一のものに転換し、そこに自らの出自が感じ取れるドローイングをすることで、そこに新たな空間や環境を指し示すことになるようです。

升谷は、新宿御苑の植物園を、都会のど真ん中に存在するオアシスのような存在として捉え、そこで見た色とりどりに咲き誇るカラフルな花や見たこともないような大きい葉を擁する植物を自らの日常に落とし込み、ビル群に囲まれ人工的な囲いの中で逞しく生きる植物の生命力を紙に写し取ろうとします。繊細な色鉛筆の色彩からは、都市生活の中での感情の機微を感じる一方で、大胆な構図からは、あらゆる状況を飲みこみ、乗り越えていこうとする勇敢さを感じます。今展では、オーバーサイズのペーパーワークとして壁紙を制作し、壁一面を覆います。これまでも絵画作品の中にスタンプという手法を用いてきましたが、コントロールするサイズがはるかに大きくなることで、より身体性が際立ち、空間への広がりを感じます。

環境が変わり、状況が変わり、歳を重ね、誰しもが直面するそれぞれの人生の変化を、アーティストはアーティストであるためにどのように受け入れ、時に受け入れず、制作をするのでしょうか。生きていく上での変化は、度々「寄る年波には逆らえない」「人生の荒波」など、「波」に例えられますが、二人のアーティストはその波に乗りサーフィンを試みているかのようです。若い頃に乗れたボードは今の自分には合わず、ボードの種類を変えるように、環境や状況に応じてメディアを変え工夫を凝らしながら果敢にも波に挑む姿勢を、皆様にぜひご高覧いただきたく、ご案内申し上げます。

池崎拓也は1981年生まれ。主な個展に、2017年「ビューティフル♡ワールド」Satoko Oe Contemporary(東京)、2013年「楽園創造 ―芸術と日常の新地平―」ギャラリーαM(東京)、主なグループ展に、2018年「池崎拓也 + 玉山拓郎|She saw The C, though」 See Saw gallery+hibit(愛知)、2014年「奄美の芸術祭2014 徳之島アートプロジェクト」伊仙町立歴史民俗資料館(鹿児島、徳之島)など。

升谷真木子は1982年生まれ。主な個展に、2017年「light relief」ANA インターコンチネンタルホテル東京(東京)、2016年「whose sleeve?」Satoko Oe Contemporary(東京)、主なグループ展に、2013年「Kiss the Heart#2」日本橋三越ショーウィンドウ(東京)、2012年「Art Award Tokyo Marunouchi」行幸地下ギャラリー(東京)など。

 

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